オーストラリア研究会議励起子科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(ARC Centre of Excellence in Exciton Science)は6月6日、同センターのメンバーを含むニューサウスウェールズ大学(UNSW Sydney)とロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究チームが、室温で液体の白金を用いて化学反応を生じさせることができる高効率な触媒システムを開発したと発表した。研究成果は学術誌 Nature Chemistry に掲載された。
(提供:豪政府)
白金は触媒としての効率性に優れているが、高価であることや、触媒システムの運用に高いエネルギーコストを要することが工業用途での普及を妨げている。通常、白金は1,700°Cと高い融点を持つが、今回、研究チームは、液体ガリウム(融点29.8°C)と組み合わせることで、白金を強力な工業炉で加熱しなくとも融解できるようにした。最初に白金をガリウムに溶かして触媒システムを作る段階でのみ高温処理が必要だが、その際の温度も、従来の工業規模の処理と比べて格段に低い(300°C)。
効果的な触媒作用を得るために必要なガリウムに対する白金の比率は0.0001未満と小さく、効率性は固体の白金を用いた触媒システムと比較して1,000倍高い。
新たなシステムは希少な貴金属である白金を節約できるだけでなく、二酸化炭素(CO2)排出量の削減や、より持続可能性の高い肥料用のアンモニア合成や燃料電池の製造につながる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部