オーストラリアのグリフィス大学(Griffith University)は、タスマニア州が同国の管轄区域として初めて、二酸化炭素(CO2)の排出削減と除去を通じて実質上の「カーボンネガティブ」(温室効果ガスの排出量を上回る削減効果の実現)を達成したことを明らかにした。5月3日付け発表。この研究成果をまとめた論文は学術誌 Environmental Research Letters に掲載された。
この成果は、同州でパルプ材生産向けの天然林の伐採面積が減少したことにより達成された。こうした森林管理上の変化は、国内の排出削減に向けほかの州や特別地域でも導入できると専門家は指摘している。
筆頭著者である同大学のブレンダン・マッキー(Brendan Mackey)教授は、「論文で報告しているように、大きな原因の1つが、天然林の伐採による森林の減少と劣化により生じている」とし、森林管理は地球温暖化の抑制と「パリ協定」(地球温暖化対策の国際枠組み)の目標の達成に役立つとの見方を示した。
共著者であるオーストラリア国立大学(ANU)のデービッド・リンデンマイヤー(David Lindenmayer)教授は、「タスマニア州はこれまで温室効果ガスの実質上の排出者だったが、今では排出量を上回る量を大気中から除去している」と、同州の大きな変化を称賛した。そのうえで、「伐採による排出を回避するための森林管理の変更は、天然林の成長を可能にすることと合わせ、排出削減と大気中からのCO2除去を同時に実現できる効果的な戦略」と指摘した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部