オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は6月14日、同国に生息する鳥ホオグロオーストラリアムシクイ(Purple-Crowned Fairy Wren)が生後数日間に高温・乾燥条件下にさらされた場合、DNAに損傷が生じるという新たな研究結果を伝えた。この研究の成果は同日付で Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS:全米科学アカデミー紀要)に発表された。
ホオグロオーストラリアムシクイは絶滅の危機に瀕している。この研究結果は、温暖化が個体群の存続に影響することを示唆している。
同大学のジャスティン・イーストウッド(Justin Eastwood)博士によると、高温条件と乾燥条件の組み合わせは、老化に関わる「テロメア」と呼ばれるDNA領域の短縮を伴うという。テロメアが短くなった雛鳥は、さらなるDNA損傷に対処する能力が弱くなり、より早く老化し、早く死亡する。
「詳細な研究により、雛鳥のテロメアの長さが寿命と生涯に設ける子の数のバイオマーカーになることが分かった」と、プロジェクトリーダーのアン・ピーターズ(Anne Peters)教授は語る。チームは複数の気候シナリオを用いて、この個体群が温暖化の影響を回避して存続可能性を維持する方法をモデル化したが、温暖化のスピードを考えるとこれらの回避策を実現できる可能性は低下し続けていると指摘している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部