オーストラリアのシドニー工科大学(University of Technology Sydney)は6月8日、同大学の生物学者、生物工学専門家、物理学者らから成る学際共同研究チームが、3Dバイオプリンティング技術を用いて、患者由来の幹細胞から人工の心臓組織を作る研究に取り組んでいることを発表した。
この研究では、主に以下の2つに関する画期的な技術が用いられている。
心不全を治療するための心臓移植は拒絶反応や感染症、ドナー不足の問題によって実施が困難なことが多く、これに代わる実行可能な治療方法が必要とされている。
これまでバイオプリンティングにより作製されてきた人工組織は、劣化が早いため長期的治療としての利用に制限があった。
そこで、UTSの研究チームは、耐久性に優れた天然高分子(絹フィブロイン)のハイドロゲルを用いることで、人工組織の寿命を延長させようと試みている。さらにこのハイドロゲルは人体で引き起こす免疫原性応答が少ないため、移植による拒絶反応を回避できるという。
チームは既にこの技術を前臨床研究で検証し、長期的治療に利用できる可能性があることを実証している。今後は心臓外科医や心臓専門医と協力して、この技術を臨床で安全に検証することを目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部