2022年08月
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マグロの胃内容物を「メタバーコーディング」で解析―エルニーニョとラニーニャ現象を比較

オーストラリアのキャンベラ大学(University of Canberra)の研究チームは、分子技術を用いてマグロの胃内容物と腸内マイクロバイオームを分析し、太平洋の生態系の実態をほぼリアルタイムで明らかにした。5月10日付け発表。研究成果はオープンアクセスジャーナル Frontiers in Marine Science に掲載された。

気候変動の一環で海面水温が上昇するエルニーニョ現象や、低下するラニーニャ現象のような気候パターンがより顕著になっている。これらを含むエルニーニョ・南方振動(El Niño-Southern Oscillation:ENSO)のサイクルは、気象系から山火事、洪水、生態系、経済まで広範囲に影響を及ぼす。

研究チームはENSO発生中の2015~2017年に太平洋で捕獲されたマグロの胃の標本を、動物相全体のゲノム配列決定を同時に行える「メタバーコーディング」手法を用いて解析した。その結果、「餌生物の多様性や、水域、マグロの種類、ENSOのフェーズの違いによる腸内細菌の構成の違い等の生態学的変化を検出できた」と、研究を率いたアレハンドロ・トゥルヒージョ-ゴンサレス(Alejandro Trujillo-González)博士は語る。

例えばラニーニャ現象中に捕獲された魚の胃内容物は、エルニーニョ現象中に捕獲された魚と比べると、餌生物の多様性が大きかった。これには「エルニーニョ現象中の低い栄養状態」が関与していると同博士は解説する。

研究チームは現在、船上や野外実験施設でこのような解析を行える、持ち運び可能な技術の開発を目指しているという。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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