オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、英国のサウサンプトン大学(University of Southampton)との共同研究により、南極海の海洋循環における変化が東南極氷床に及ぼす影響を初めて明らかにしたと発表した。8月3日付。この研究の成果は同日付けで学術誌 Nature Climate Change に掲載された。
この研究は、東南極の棚氷付近の海水温上昇が、東南極氷床の安定性を損なう可能性のある水塊の再構成と関連していることを示した。
南極のデービス基地近くに漂流する氷山
(提供:CSIRO)
CSIROの科学者で本研究の筆頭著者であるラウラ・ヘライス-ボレゲーロ(Laura Herraiz-Borreguero)博士は、この研究について、地球規模の海面上昇の主要因となりうる東南極氷床の融解の物理的機構に関してこれまで不明だった知識の欠落を埋めるものだと語る。
今回の研究により、大陸棚の温暖化が、南極海の上を吹く西風の数十年規模の極方向への移動(poleward shift)を伴うことが分かった。この風の緯度の変化によって南側の南極周極流(Antarctic Circumpolar Current)が極方向へと移動し、より多くの暖かい海水が南極の近くへと移動する。
共著者であるサウサンプトン大学のアルベルト・ナビエラ-ガラバト(Alberto Naveira-Garabato)教授は、「南極の氷床の安定性を保ち、世界の海面上昇の平均を2100年までに0.5 m程度に抑えるには、温暖化を1.5℃未満に抑えることが最適の方法 」だと語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部