オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は香港大学(University of Hong Kong)との共同研究により、海洋熱波にさらされたウニの成体が、生存にかかわる遺伝子の防御機構を次世代に伝えることができるかどうかを研究した。8月9日付け発表。この研究成果は学術誌 Global Change Biology に掲載された。
この研究は、ウニが生理的適応により極限条件で生存する能力と、この耐性を次世代に伝える能力は、基本的に耐熱限界(heat tolerance limit)によって決まることを明らかにした。
(Image: Dr Maria Byrne, Heliocidaris juvenile under microscope
同大学のマリア・バーン(Maria Byrne)教授は、「熱ストレスにさらされた際、いくつかの種のウニは、同じ種類のストレスを受けた時の防御策となる機構を子に伝えることができる。しかし、このような『持ち越し効果(carryover effects)』が、稚ウニの成長過程全体を通じて有効であるかどうかは、大きく変動する」と解説する。
この研究では、オーストラリアに生息するムラサキウニの一種(Heliocidaris erythrogramm)をさまざまな海洋熱波シナリオ(中または高強度)にさらして産卵させた。さらに生まれた子を幅広い範囲の温度で飼育し、その発達を追跡して「持ち越し効果」を評価した。驚くべきことに、熱波条件にさらされた親は、より成長が早く、より大きく、より熱への耐性が強い子を産んだ。しかし、熱波が持続すると、子の死亡率は高くなった。
香港大学のベイデン・D・ラッセル(Bayden D. Russell)博士は、「ウニは生態系の維持に重要な役割を果たしているため、親の助けにより子が極端な高温下でも生存できれば、生態系全体の機能を維持することにつながる。しかし熱波が持続した場合は、これらの重要な生態系が破壊される」と語った。
(Image: Dr Maria Byrne, Heliocidaris population in Sydney, Australia)
(提供:いずれもシドニー大学)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部