オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、オーストラリアの穀物生産者を悩ませている農耕地雑草アレチノギク(flaxleaf fleabane、学名:Conyza bonariensis)を駆除するための、真菌(fungus)を用いた生物的防除剤(biocontrol agent)を試験的に導入すると発表した。8月25日付け。
南米を原産とするアレチノギクは繁殖力が強く、急速に拡大する。オーストラリア全域の農地や牧草地に被害をもたらしており、穀物生産の収益にもたらす損害は年間4,300万豪ドル(約42億円)に達する。
CSIROの雑草生態学者ベン・グッデン(Ben Gooden)博士は、アレチノギクは一部の除草剤への耐性を獲得しており、穀物生産システムにおけるもっとも管理困難な雑草の1つであると語る。
グッデン博士らはコロンビアで、アレチノギクに感染して組織を破壊し成長を阻害するさび病菌の一種「Puccinia cnici-oleracei」を同定し、キャンベラにあるCSIROの隔離施設での綿密な検査の結果、オーストラリアに導入しても安全であることを確認した。同プロジェクトではCSIROが導入地を選定したうえで希望する農家にこの防除剤を配布し、効果に関する報告を収集する。
研究を支援するGrains and Research Development Corporation のジェイソン・エムズ(Jason Emms)博士は、「この生物的防除剤を既存の雑草管理戦略と組み合わせることで全体の個体数を減らせる可能性がある」と期待を膨らませた。
生物的防除剤をかけられたアレチノギク
生物的防除剤によって駆除が期待されるアレチノギク
アレチノギクは従来の除草剤には耐性があるが、真菌のみ駆除が期待される
アレチノギクの中でベン・グッデン(Ben Gooden)博士
(Image: GRDC)
(提供:いずれもCSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部