2022年09月
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ネズミ駆除―毒餌の濃度を2倍にすることで効果が大 オーストラリア

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究により、農業でネズミ駆除に使用される毒餌(bait)のリン化亜鉛(zinc phosphide:ZnP)濃度を2倍にすることで、ネズミの個体数を大幅に減らせることが判明した。8月3日付け発表。研究の成果は同機構が発行する学術誌 Wildlife Research に掲載された。

この研究は、ネズミのZnPへの感受性が報告されているよりも低いことを示した実験室での2件の研究成果を、フィールド調査により裏付けたものである。一連の研究は、大規模農業でネズミを管理するには毒餌の効果が不十分なのではないかという農家の懸念を受けて実施された。

CSIROの研究者スティーブ・ヘンリー(Steve Henry)氏によると、実験室での研究により、穀物1kgあたり25gのZnPを穀物に塗布した毒餌では、ネズミに致死量の毒を摂取させられるとは限らないことがわかった。そのうえ、一度毒餌を食べて生き延びたネズミは毒餌を回避するようになるという。

「ニューサウスウェールズ州パークス(Parkes)の近くで実施されたこの最終的な研究では、一貫してネズミの個体数を減らすには穀物1kgあたり50gのZnPを含む毒餌が必要であることを確認した」とヘンリー氏は語る。

オーストラリア農薬・動物用医薬品局(Australian Pesticides and Veterinary Medicines Authority)は2021年に同国で起こったネズミ大量発生のさなかに、CSIROによる上記の実験室での研究に基づき、穀物毒餌中のZnP濃度を穀物1kgあたり25gから50gに増やすことを認める緊急使用許可を発行している。

CSIROの研究者スティーブ・ヘンリー(Steve Henry)氏ら
(Credit: Sharyn Watt)

スティーブ・ヘンリー(Steve Henry)氏
(Credit: Sharyn Watt)

ネズミ
(Credit: Peter Brown)

ネズミ
(Credit: Peter Brown)
(提供:いずれもCSIRO)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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