オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は、同大学の地質学者らが、10年以上にわたるグレートバリアリーフの観察に基づき、人工衛星を用いて珊瑚礁の健全度(health)や気候変動への反応を推定する方法を開発したと発表した。10月12日付け。研究成果は同日付けで学術誌 Geology に掲載された。
珊瑚礁の成長や後退の条件や健全度は、波や潮、堆積速度、海水の化学的性質等の複雑な要因が組み合わさって決定されるため、健全度や気候変動への反応を予測することは非常に難しい。アナ・ヴィラ-コンセホ(Ana Vila-Concejo)准教授によると、「データを収集する従来の方法は、水の化学的性質の測定や数千枚の写真撮影等、大量の作業を要していた」という。
グレートバリアリーフの砂エプロンを調査するシドニー大学のチーム
(提供:シドニー大学)
これに対し、コンセホ准教授率いる研究チームは、礁嶺(reef crest)からの波や流れに運ばれた堆積物が礁湖に留まって形成される「砂エプロン(sand apron)」の人工衛星画像を用いて、長期間にわたる炭酸塩の生産性を推定できることを発見した。炭酸塩の生産性は珊瑚礁全体の生態系の健全度を判断するための重要な指標となる。
この研究により、グレートバリアリーフの南側における今日の炭酸塩の生産性は、砂エプロンが形成された数千年間と比較して半分に減少していることがわかった。「現在のデータにはおそらく気候変動の影響が反映されている」とコンセホ准教授。
堆積物の生産、流体力、礁湖の埋積といった砂エプロンの形成要因に対する気候の影響はまだ明らかになっていないが、今回の研究は、これらの挙動や進化を理解することは、珊瑚礁の全体的な健全度を判定するための近道になることを示唆している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部