オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)のサラー・スッカリエ(Salah Sukkarieh)教授は、世界の食料安全保障の改善に向けて農業ロボティクスや人工知能(AI)が果たす役割について提言する。
飢餓の撲滅・食料安全保障の確保・栄養改善は、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の「目標2」を構成する。飢餓への取り組みには進展がみられるものの、紛争や気候変動、景気後退、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック等の要因が目標の達成を妨げられている。
スッカリエ教授は、アジア太平洋(APAC)の食料安全保障を改善するために開発した自律型農業ロボット「デジタル・ファームランド(Digital Farmhand)」について、「小型のトラクターのような自律型電動車両で、さまざまな農作業機を牽引でき、労働集約的な農作業を精密に自動化(precision automation)する。スマートフォン技術とAIを用いて収量見積り等の解析を行うこともできる」と説明した。
そのうえで、同教授は「APACが地域社会の食料を賄うには、2050年までに食料生産を最大77%増加させる必要がある。食料不安の主な要因への対応を加速するための大胆な手段を講じ、地域の農家に再び力を与えるスマートなソリューションを推進しなければならない」と訴える。
自律型農業ロボット「デジタル・ファームランド」
(Australian Centre for Field Robotics)
(提供:いずれもシドニー大学)
同教授のチームは今後、APAC地域で調達可能な材料を用いて現地化したモジュール式のデジタル・ファームランドを開発することを計画している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部