2022年11月
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グレートバリアリーフの「緑のドーナツ」の謎を解明 オーストラリア

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)の研究者が率いる国際・学際研究チームが、グレートバリアリーフにみられるドーナツ状の「バイオハーム(bioherm)」のサンプル収集と体系的なマッピングを初めて行い、豊かな生態系が存在することを明らかにした。10月19日付け発表。

これらのバイオハームは、石灰藻の一種であるサボテングサ属(Halimeda)の藻類の遺骸により形成されている。北側のグレートバリアリーフ棚の約26%を占め、生物の重要な生息地となっているが、その形成過程や構造についてはほとんど知られていなかった。

バイオハームと海底の画像
[Credit: Robin Beaman and Mardi McNeil]

ジョディ・ウェブスター(Jody Webster)教授が率いる研究チームは、過去1万2,000年間の完新世(Holocene)において、完全な環に近いこれらの構造がどのようにして形成されてきたかを理解するため、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の調査船「RV Investigator」に乗って調査を行った。25日間の航海を終えたチームは、バイオハームからの多数のサンプルと表面・表面下のマップを持ち帰った。

航海に参加した同大学の海洋生物学者マリア・バーン(Maria Byrne)教授は、これらのサンプルには、ゴカイ類やクモヒトデ類の数百のサンプルとともに、ヒトデ、藻類、海綿動物の新種が「確実に」含まれており、これからDNAや分類学的同定を用いてその新規性を確認すると語った。

調査地点を示すクイーンズランド州沿岸の地図
[Credit: CSIRO]
(提供:いずれもシドニー大学)

ウェブスター教授は、ソナーマッピングによって、バイオハームの体系的かつ史上最高解像度の3D海底画像を得た今回の航海は「信じられないほどの成功」であったとし、「これによって、バイオハームの奇妙な海景を構成する幾何学的形状やパターンをついに理解できるだろう」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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