オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は、同大学が主導する国際共同研究コンソーシアムが、生体の血管の複雑な構造を模倣する人工血管材料を開発したと発表した。10月24日付け。研究成果は学術誌 Advanced Materials に掲載された。
「生きた血管」のイメージ
(Credit: Designed by Ziyu Wang and illustrated by Ella Maru Studio)
前臨床試験でこの材料を用いて作製した人工血管をマウスに移植したところ、マウスの体が材料を受け入れ、新たな細胞と組織が適切な場所で成長し、人工血管を「生きた血管」へと変化させた。責任著者(Senior author)である同大学のアンソニー・ウェイス(Anthony Weiss)教授は、天然の血管の複雑な構造とこれほどよく似た血管が形成されたのは今回が初めてであると語る。
天然の血管の壁はエラスチン(血管に弾性と拡張性を与えるタンパク質)でできた同心円状の輪によって構成されており、この構造が、血流に応じた血管の伸縮を可能にしている。今回開発された技術では、これらのエラスチンの同心円状の輪が、移植した人工血管の壁の内部で自然に形成される。
「生きた血管」を構築するために使用される
材料の構造
(提供:いずれもシドニー大学)
ウェイス教授は「生体組織の複雑な構造を再現できるこの技術は、人工血管だけでなく、心臓弁のようなほかの人工組織の作製にも利用できる可能性がある」と話している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部