2023年01月
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南極の生物多様性保護へ、コスト効果の高い戦略を特定 オーストラリア

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究者らが、南極の陸上の生物多様性を守るための管理戦略への投資とそのコスト効果を評価した初めての研究を発表した。

温室効果ガスが現在のペースで排出され続け、平均気温の上昇を2度未満に抑えることができない場合、2100年までに、南極に生息するコウテイペンギン等の海鳥や多くの動植物が絶滅または大幅な減少の危機にさらされる。しかし、今回の研究により、大部分の在来種に利益をもたらし、大幅な減少を防ぐことができるコスト効果と実行可能性の高い戦略が明らかになった。

筆頭著者であるクイーンズランド大学(University of Queensland)のジャスミン・リー(Jasmine Lee)博士は「10の管理戦略のコスト、実行可能性(feasibility)、有益性を、異なる気候変動シナリオの下で評価した」と解説する。

最も有益な戦略は、南極の生物多様性にとって最大の脅威である気候変動を抑えるように「世界的な政策に影響を与える」ことであったが、この戦略は実行可能性が最も低かった。

一方、最もコスト効果の高い戦略は、教育や訓練を通じた行動変容により、「人間の活動による影響を最小化する」ことであった。リー博士は、「人間が気候変動を抑えることができないとしても、『政策に影響を与える』以外のすべての戦略を組み合わせることで、53~75%の分類群(taxa)に利益をもたらすことができる」と語った。

研究成果は2022年12月22日付けで学術誌 PLOS Biology に掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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