オーストラリアのメルボルン大学(University of Melbourne)は1月6日、賢明な窒素管理方法を全世界の農地で実施することにより、わずか190億米ドルの費用で4,760億ドルの社会的利益がもたらされる可能性があるという研究結果を発表した。同大学の研究者を含むオーストラリアをはじめ、中国、オーストリア、ドイツ、英国、オランダの国際共同研究チームによる研究の成果で、論文は学術誌 Nature に掲載された。
農地で肥料として使用される窒素の半分以上が環境中に失われ、大気・水の汚染や土壌酸性化、気候変動、生物多様性の低下を引き起こしている。
この研究では、過去20年間に行われた1,521件のフィールド観察のメタ分析により、農地からの窒素の損失を大幅に減らしながら作物収穫量を増加させる、コスト効果の高い方法を明らかにした。これらの方法には、効率性の高い肥料、灌漑、マメ科植物の輪作(legume rotations)、適切な種類と量の肥料を適時・適所に施用することによる栄養管理の改善等がある。
研究チームは窒素削減の費用を社会全体で負担することを推奨し、フードチェーンの複数の関係者の責任と限界に基づきインセンティブを提供する「農業窒素クレジットシステム(agricultural nitrogen credit system)」という画期的なシステムを提案している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部