オーストラリア(豪州)のモナシュ大学(Monash University)は1月3日、同大学の生物学者が率いる国際共同研究チームが、代謝異常等の疾患に対する効果的な食事を調べるためのモデル動物として、ショウジョウバエが適していることを発見したと発表した。研究成果は学術誌 Trends in Endocrinology and Metabolism に掲載された。
食物の代謝に異常をきたす遺伝性疾患は1,400種類以上あり、先天代謝異常(Inherited Metabolic Diseases:IMD)と総称される。IMDは新生児や乳幼児の死亡の大きな原因となっている。
IMDには食事の変更が効果的な場合があるが、各疾患の発生頻度が低いこともあり、患者に対してさまざまな食事の効果を調べる試験を行うことは難しい。そこで、研究チームは、試験モデルとしてキイロショウジョウバエ( Drosophila melanogaster )を使うことを思いついた。
ショウジョウバエは、ヒトの疾患原因遺伝子の約75%を持つことや、短期間で繁殖すること、多数の遺伝子操作方法を利用できること等から、ヒトの疾患の遺伝的原因を調べるためのモデル動物として確立されている。
共同責任著者のトラビス・ジョンソン(Travis Johnson)博士は「このように研究対象の疾患が多数あり、疾患ごとに異なる実験を必要とする大規模な研究にはたいへん適している」とし、「このハエモデルを出発点として、食事に反応する可能性のある疾患を見つけることを目標としている」と語った。
「さらにハエの場合完全にカスタマイズ可能な餌を入手できることも、食事と遺伝子の相互作用を理解するための可能性を開いている」と、もう1人の共同責任著者であるマシュー・D.W.パイパー(Matthew D.W. Piper)准教授は付け加えた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部