オーストラリア産業・科学・資源省(DISR)は2月1日、キャンベラ大学(UC)が、宇宙滞在時の微小重力環境が人体に及ぼす影響を軽減するソックス型のウェアラブルデバイスを開発したと発表した。
微小重力環境に滞在すると、身体の動きに対する感覚が変化する。そのため、帰還後に地球の環境に再適応する際、宇宙飛行士の身体に大きなショックを与え、けがのリスクを伴う。
同大学のゴードン・ワディントン(Gordon Waddington)教授(スポーツ医学)が率いる研究チームは、この問題に対処するため、着圧ソックス型のウェアラブルデバイスを開発した。同教授は「凹凸加工された(textured)インソールを着用すると、脳に伝えられる触覚情報(体性感覚)が増え、微小重力でみられる機能低下が軽減する。さらなる研究により、内側に触覚面(tactile surface)のある着圧ソックスによってこの効果がより大きくなる可能性が示唆された」と説明した。
この技術はアスリートや高齢者等、宇宙飛行士以外の人々にも役立つ可能性がある。チームは豪スタートアップ企業プリズムニューロ(Prism Neuro) と共同で、このソックスを用いた治療・測定システム「AMEDA:Active Movement Extent Discrimination Apparatus」の検証を行っている。
この研究は、宇宙飛行士の健康に関する研究を支援する米航空宇宙局(NASA)のプログラム「Human Exploration Research Opportunities」の下でオーストラリア宇宙庁(Australian Space Agency)の助成を受けて開始された。現在では米マサチューセッツ工科大学(MIT)等も参加する国際共同プロジェクトに発展している。
(提供:いずれもDISR)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部