2023年03月
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新型コロナへの感染を阻止する新たな受容体発見 豪シドニー大学

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)の科学者らは、肺で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する天然の「保護バリア」を形成するタンパク質を発見した。2月10日付け発表。研究成果は学術誌 PLOS Biology に掲載された。

左はコントロール群の肺。右はCOVID-19 感染者の死後肺組織切片におけるLRRC15タンパク質の新たな受容体(緑色)
[©Loo and Waller et al.]
(提供:シドニー大学)

SARS-CoV-2への感染は、主にウイルスがアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体と結合することにより起こる。今回発見された「ロイシンリッチリピート含有タンパク質15(LRRC15)」もSARS-CoV-2と結合する受容体であるが、感染を助けない点でACE2と異なる。LRRC15はウイルスに結合して動きを封じ込め、ほかの細胞がウイルスに感染することを防ぐ。さらにこの受容体は肺の線維化も抑制することがわかった。

この研究は、LRRC15と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との相互作用を解明した3本の独立した論文の1つである。研究を率いたグレッグ・ニーリー(Greg Neely)教授は「オックスフォード大学(Oxford)、ブラウン大学(Brown)、エール大学(Yale)のグループと共に、SARS-CoV-2を阻止するこのLRRC15タンパク質の新たな受容体を発見した」とし、「この受容体を用いて、ウイルス感染を阻止し肺線維化も抑制しうる、広範囲に作用する薬を設計できる」と展望を述べた。

チームは現在、LRRC15を用いた複数の変異株に作用するCOVID-19治療戦略として、鼻を標的とする予防治療と、重症例の肺を標的とする治療の2つを開発しているという。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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