2023年04月
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鳥インフルエンザが新たなパンデミックを引き起こす可能性 シドニー大学

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は3月13日、中国・復旦大学(Fudan University)と共同で、動物の間で生まれたインフルエンザウイルスの新たな変異株が人間に次なるパンデミックを引き起こす可能性があるとする研究結果を明らかにした。研究成果は学術誌 One Health に掲載された。

電子顕微鏡で見る鳥インフルエンザH5N1型
©Cynthia Goldsmith, Jackie Katz

研究チームは1970~2016年の動物インフルエンザの記録7万件以上から成るデータベースを作成し、これらのウイルスの時空間的変化に伴う傾向を洞察した。「動物由来のインフルエンザウイルスは、その死亡率の高さを考えると、人で流行すれば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはるかに上回る影響力を持つ可能性がある」と、共同執筆者である同大学獣医学部(School of Veterinary Science)のマイケル・ウォード(Michael Ward)教授は語る。

マイケル・ウォード教授

研究者らは、鳥インフルエンザが次のパンデミックを引き起こす可能性があると結論付けている。鳥を自然宿主とする鳥インフルエンザのサブタイプは非常に幅広く存在するため、人獣共通感染症となる可能性が高い。

ルーマニアでの鳥インフルエンザに対する検査
©Michael Ward
(提供:いずれもシドニー大学)

ウォード教授はさらに、同じ宿主が2種類のインフルエンザウイルスに感染した場合、遺伝物質が混ざり合い、パンデミックを引き起こしうる新たなウイルスが生まれる可能性があると語る。たとえば、鳥由来のウイルスがブタにおいて変異したあとに人に感染した場合、「世界的な健康危機」がもたらされる可能性があるという。

同教授は、保健当局が新たなインフルエンザ株を検出できる態勢を整えるには、世界での動物インフルエンザに関するより多くの調査とデータ公表が必要であると考えている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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