2023年05月
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神経損傷を修復する世界初の細胞移植技術で追加の助成金獲得 豪グリフィス大学

オーストラリアのグリフィス大学(Griffith University)は3月30日、神経系の損傷を修復するための画期的な細胞移植技術を開発する同大学の研究が、クイーンズランド州政府のMotor Accident Insurance Commission(MAIC)から追加で540万豪ドルの研究助成金を交付されたと発表した。

同大学Clem Jones Centre for Neurobiology and Stem Cell Researchの研究チームを率いるジェームズ・セント・ジョン(James St John)教授は、交通事故外傷(road trauma)を負った人々にとって脊髄損傷、末梢神経損傷、脳損傷といった損傷は、生涯にわたる麻痺やQoLの低下を引き起こすため、特に大きな懸念になっていると語る。

同チームは、脊髄損傷を移植によって治療するための世界初の「細胞神経ブリッジ(cellular nerve bridge)」技術を開発している。既に前臨床モデルで脊髄損傷の治療に対する有効性を示しており、「慢性期の脊髄損傷の治療に関する第1相臨床試験まであと少しの段階に入っている」とセント・ジョン教授は語る。さらに同教授は「今回の新たな助成金により、この技術を末梢神経と脳損傷を含むより広範囲の神経損傷へと拡大することが可能になる」と述べた。

MAICは自動車の強制賠償責任保険(Compulsory Third Party)を管掌する規制機関であり、2017年からこの研究に出資している。MAICの保険コミッショナー(Insurance Commissioner)ニール・シングルトン(Neil Singleton)氏は「この重要な研究に対する継続的な支援は、交通事故外傷の影響の軽減につながる取り組みに投資する我々の意志を反映している」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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