オーストラリア研究会議励起子科学分野のセンター・オブ・エクセレンス(ARC Centre of Excellence in Exciton Science)は4月26日、ニューサウスウェールズ大学(UNSW Sydney)に所属する同センターの研究者らが、有機発光ダイオード(OLED)を用いて磁場を画像化する技術を実証したことを発表した。この研究成果は学術誌Nature Communicationsに発表された。
磁場を検知する技術は、科学研究・産業・医療において重要な用途を持つが、既存の量子センシング技術は大型で高額な装置を使用し、高出力レーザーや極低温環境を必要とする。
今回開発された技術はカメラとマイクロ波電子装置を用いて光学的に磁気共鳴を検出する。物理的原理は磁気共鳴画像法(MRI)と同様である。マイクロチップスケールで機能し、レーザーを使用する必要がないため、装置は小型で、デバイスと柔軟に統合できる。また、テレビやスマートフォン等の電子機器で既に量産化されているOLEDを用いることから、商用化にも適すると期待されている。
磁場イメージング用の空間分解能 ODMR (光学検出磁気共鳴) システムの図
(出典:いずれもARC Centre of Excellence in Exciton Science)
同センターの主任研究者(Chief Investigator)であるUNSW Sydneyのデーン・マッケイミー(Dane McCamey)教授は、将来の用途について、「この技術をスマートフォンに搭載し、医療における遠隔診断や材料の欠陥の検出に利用することが考えられる」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部