オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、5月20日の「世界ハチの日(World Bee Day)」にちなみ、寄生虫対策のための研究を含む、同機構が取り組んでいるハチに関する活動を紹介した。
昆虫学者のジョン・ロバーツ(John Roberts)博士らは、巣箱やミツバチから採取した環境DNA(eDNA)を用いて、セイヨウミツバチに最も深刻な被害をもたらす寄生虫、ミツバチヘギイタダニ(Varroa mite)を早期に発見する方法を研究している。
ミツバチに寄生したミツバチヘギイタダニ(Varroa mite)
© Denis Anderson
この寄生虫は、2022年6月にニューサウスウェールズ(NSW)州で発見され、同州第一次産業省(NSW DPI)は生物防除区域(biosecurity zone)を設けて対策を講じている。
チームは、この寄生虫のゲノム解析を通じて、同州への侵入の詳細や、この寄生虫が媒介することで知られるチヂレバネウイルス(Deformed Wing Virus: DWV)等のウイルスの有無も調べている。「幸運にも、我々のゲノムシーケンス解析ではまだDWV株は検出されていない」と同博士は話す。
ニュージーランドにてeDNAサンプリング試験で蜜を調べる研究者
フランシスコ・エンシーナス-ヴィソ(Francisco Encinas-Viso)博士は、上記の調査用に開発したeDNAサンプリング技術に基づき、ハチが集めた花粉を用いて顕花植物をモニタリングする方法を研究している。「国立公園でハチやハエが集めた花粉のDNAを解析し、花を咲かせている植物種や花粉を媒介している昆虫種を調べた結果、気候変動の影響を把握するために重要な、生態系の微細な規模の変化を追跡できることがわかった」と同博士は語った。
受粉するミツバチ
CSIROのオーストラリア国立昆虫コレクション(Australian National Insect Collection)では豪州在来種のハチを研究しているほか、世界最大のハチ「ウォレスの巨大バチ」(Wallace's Giant Bee、学名Megachile pluto)の標本を保管している。
ウォレスの巨大バチの標本
(出典:いずれもCSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部