2023年06月
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深海サンゴ礁の保全に向けたマッピングにAIシステム開発 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は5月17日、深海のサンゴを迅速かつ正確に見つけるための人工知能(AI)システムを開発したと発表した。

深海のサンゴはさまざまな生物の生息地となっている

深海のサンゴ礁は海底に生息するさまざまな生物の住処となっているが、漁業等の影響によって傷つきやすく、保全にはマッピングとモニタリングが重要となる。しかし、海底の観察には多大なコストと手間を要する。特に、撮影した海底の画像を人の目で1つずつ確認し、分類する作業は、保全活動に関する意思決定を遅らせるボトルネックとなっていた。

CSIROの研究者はこの問題を解決するため、人工ニューロンの多層ネットワークで構成される深層学習(ディープラーニング)システムを開発し、CSIROの調査船「RV Investigator」が2018年のタスマニア南岸沖の航海で撮影した海底の映像や写真を用いて訓練した。

調査船「RV Investigator」に積み込まれるカメラ装置

完成したモデルは、手動で3カ月以上かかる画像の分類をわずか20分で完了し、サンゴやサンゴの破片、砂、石等の海底の6つの特徴を98.19%の正解率で見分けることができる。その能力は人間と遜色なく、人間に分類が難しい複雑な画像を適切に分類できることもあるという。

このシステムのようなAIは今後、海底のサンゴ礁をはじめとする生態系の保全や、深海漁業による環境への影響の最小化に役立つと期待される。

生命があふれる深海のサンゴ礁
(出典:いずれもCSIRO)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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