2023年07月
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脳の形状、その機能に大きく影響 オーストラリアで研究

豪州のシドニー大学(University of Sydney)は6月1日、同大学と人間の脳の幾何学形状(geometry)が脳の動態に対して、脳細胞内部の結合よりも大きな影響を及ぼすことを明らかにしたと伝えた。モナシュ大学(Monash University)の共同研究チームが、この研究成果はニューロン間の複雑な結合の重要性を強調する従来の見解に異議を唱えるものであり、論文は同日付けで学術誌Natureに発表された。

脳の幾何学形状に関する研究
Courtesty: Dr James Pang, Monash University

チームは脳活動をマッピングした結果を1万個以上分析することにより、このような知見を得た。磁気共鳴画像(MRI)を用いて固有モード(eigenmode、ある系に固有の振動または励起のパターン)を調べ、脳形状のモデルから得られた固有モードによって、脳活動の様々なパターンをどの程度説明できるかを、脳内結合のモデルから得られた固有モードと比較した。

研究チームを率いたモナシュ大学のアレックス・フォルニート(Alex Fornito)教授は「太鼓の形がその音に影響するのと同様に、脳の輪郭や曲率といった幾何学形状が、脳機能に対する最も強い解剖学的制約となっていることがわかった」と述べ、さらに、「これらの知見は、脳の形から脳の機能を予測できる可能性を示しており、脳が行動や精神疾患・神経疾患の個人差にどの程度影響するかを調べるための新たな方法を提示している」と語った。

モナシュ大学研究員のジェームズ・パン(James Pang)博士ら
(出典:いずれもシドニー大学)

また、筆頭著者の一人であるモナシュ大学研究員のジェームズ・パン(James Pang)博士は「認知症や脳卒中等の疾患の影響を、脳形状のモデルに基づき理解できるようになる可能性がある。これは脳の様々な結合のモデルを扱うよりもはるかに容易である」と述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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