2023年07月
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AIがもたらす未来は「ユートピア」でも「ディストピア」でもない―二極化した議論を検証 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は6月5日、人工知能(AI)の影響に関する二極化した議論を検証すると共に、より現実的なAIのリスクや、AIの適切な利用に向けた同機構の取り組みを紹介する記事を公表した。

(出典:CSIRO)

2022年にChatGPTが発表されて以降、AIが世界にもたらす変化が盛んに議論されている。「AIが生産性の救世主となり、雑務に追われない生活をもたらす」といったバラ色の未来を思い描く人々がいる一方で、「AIが混乱と人間性の破壊をもたらす」と恐れる人々もいる。

実際にはこうした極端な変化のいずれも、近い将来には起こりそうにない。AIが個人レベルで生産性を高めることは間違いないが、組織や社会レベルでの生産性向上が容易でないことは、これまでのデジタル技術の導入に際しても指摘されている(「ソロー・パラドックス」)。また、「AIの超知能(superintelligence)が人間性を破壊する」といった懸念も、超知能を証明するAIが登場していない現段階においては憶測に過ぎない。

一方で、現在のAIシステムに関するより差し迫ったリスクには以下のようなものがある。

  • 幻覚(hallcinate)や偏った挙動を示す可能性がある
  • 誤情報の拡散等の悪意ある行為に簡単に利用できる
  • 環境やデジタル格差の面で幅広い社会的影響をもたらす可能性がある

AIは責任ある形で正しく利用すれば、社会に害をもたらすことなく新たなイノベーションを生み出すことができる。CSIROでは、グレートバリアリーフの保全や森林火災の管理、メンタルヘルス問題の診断、新しい銀河の探索等にAIを活用している。著者らは、AIが倫理的かつ賢明に開発・利用され、生産性と生活の質を向上させる未来を目指すとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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