オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は6月15日、同大学の工学者が主導する研究チームが、人間の目のように「見て」情報を記憶し、素早い意思決定を下すことができる、非常に小さなデバイスを開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Functional Materialsに掲載された。
この神経模倣(neuromorphic)デバイスは、非常に薄い(髪の毛の数千分の1)ドープ(doped)酸化インジウムのセンシング素子で構成される1枚のチップであり、人間の目のように光を捉える機能、視神経のように情報をまとめて(pre-package)伝達する機能、脳のように情報を記憶システムに保存・分類する機能を備えている。外部の演算装置等を用いる必要がないため、エネルギー消費が抑えられ、リアルタイムの意思決定が可能になるという。
「これらの機能全てを小さなデバイス1個で実行することは今まで大きな課題だった」と、チームリーダーのスミート・ワリア(Sumeet Walia)教授は語る。
このデバイスは、メモリ更新のための頻繁な電気信号の送受信を行うことなく、過去のデバイスよりも長い期間情報を保持できることを実証した。
今回の実験は紫外光を用いて行われたが、チームは現在、可視光と赤外光にもこの技術を応用しようと取り組んでいる。この技術は、自動運転や危険な場所での作業の自動化等、複雑な意思決定を素早く行う必要がある場面に利用できると期待されている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部