オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は二酸化炭素(CO2)排出量ネットゼロ達成に向けて、その重要技術として注目される大気中CO2直接回収(Direct air capture:DAC)技術に関して、同機構の多様な取り組みを明らかにした。6月13日付け。
(出典:CSIRO)
アミン溶液を用いたCSIROの効率的なDACシステム「Ambient CO2 Harvester(ACOHA)」は、既存技術を利用するため規模拡大が容易であり、年間数百万トンのCO2を回収できると見込まれている。回収されたCO2の用途としては、飲料、農業用温室、燃料、鉱物製品等が考えられている。またCSIROは、英ロールス・ロイス(Rolls Royce Plc)と共同で、吸収液を用いたDAC技術の実証プロジェクトを英国で進めている。
CSIROが豪州のエネルギー企業サントス(Santos)と共同で開発する、固体吸収材30%、アミン溶液70%で構成される画期的な吸収材を用いた技術「CarbonAssist」は、大気中のCO2を選択的に回収でき、有効性や経済性において業界標準を大きく上回る。現在、チームは南オーストラリア州にあるサントス社の施設で実地試験に向けた準備を進めている。
DACに取り組む研究者にとっての大きな課題は、採算性あるCO2貯留・有効利用手段となるまでこの技術の規模を拡大することである。CSIROの持続可能炭素技術(Sustainable Carbon Technologies)チームのリーダーであるクラウディア・エチェヴェリア(Claudia Echeverria)博士は、循環型炭素経済の観点からこの課題に取り組むには、大気中のCO2を単なる汚染物質ではなく、未開発の資源と捉える必要があるとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部