オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は6月15日、同機構の農業・食料(Agriculture and Food)部門と製造(Manufacturing)部門の研究者が、農業用温室の屋根に設置できる太陽光発電フィルムを開発し、性能を検証していることを発表した。
太陽光発電フィルムが設置されたクイーンズランド大学内のCSIRO研究所の温室
CSIROの既存の太陽電池技術に基づき開発されたこの軽量で半透明のフィルムは、印刷技術により作製できる。温室で使用する電力を発電するだけでなく、透過する光波(transmitted light wave)を操作することにより作物の生育環境を改善できる可能性がある。
CSIROでは国内施設における2030年までのネットゼロ排出(NZE)達成を目指しており、その取り組みの一環として、2022年に内部の研究者を対象とした排出削減アイデアのコンペティションを実施した。今回のプロジェクトは、このコンペティションで獲得した資金を基に進められている。
営農型太陽光発電の分野でも可能性がある太陽光発電フィルム
(出典:いずれもCSIRO)
チームは2023年5月に、クイーンズランド大学(University of Queensland)構内にあるCSIROの研究所(St Lucia site)の温室にこのフィルムを設置し、植物の成長と太陽電池の性能をモニタリングしている。プロジェクトの終了時期は2024年前半を予定しており、最終的には、この技術をCSIROの全ての温室に導入した場合の削減可能な温室効果ガスの排出量を算出する。
このプロジェクトは、気候変動に伴って拡大すると予想される閉鎖型栽培施設(closed cropping area)における営農型太陽光発電(agrivoltaics)の研究という点でも、大きな意義を持つと考えられている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部