2023年10月
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AI活用し、ワタや細胞等微細なもののカウントを効率化 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は9月4日、小さなものの検出や計数(カウント)に人工知能(AI)を活用するための同機構の取り組みを公表した。

人間が肉眼で識別できない小さな物体や物質を顕微鏡で拡大し、対象物の数をカウントする作業には専門技能と多くの時間や労力、コストが必要となる。CSIROは、AIを用いてカウントの正確性やスピードを向上するため、次のような研究に取り組んでいる。

顕微鏡画像で有害な藻類細胞を識別することは、AIを使用して科学のやり方を変革する方法の1つだという

綿(ワタ)の葉の毛のカウント

温室で綿花を検査する研究者ら

綿の葉の裏側に生えている毛の多さは虫への抵抗性や繊維の収量、新たな品種の価値に影響する。CSIROが農業専門家と共に開発したAIモデルは、これまで専門家が目視確認に基づき評価していたこの毛の多さを、95%の正確性で同様に評価できる。

微細藻類細胞のカウント

機械学習で検出された有害な藻類細胞
(出典:いずれもCSIRO)

人間や動物に有害な影響をもたらす有害藻類ブルーム(harmful algal bloom)の検査は現在、専門家が顕微鏡を用いて行っているが、これには多大な時間と労力を要するうえ、人間が処理できるサンプル数には限界がある。CSIROはこの課題に対処するため、画像中の有害藻類を自動的に検出するようAIモデルを訓練している。

ビジネスで有効活用するには

コンピュータービジョンを専門とするCSIROのモシウル・ファラジ(Moshiur Farazi)博士は物体検出にAIを導入する際の障壁は低いとして、「少量のデータがあれば、オープンソースモデルを調整して問題解決に利用できる」と語る。しかし一方で、AIの導入が成功するかどうかは適切な質問をできるかどうかにかかっているとも指摘した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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