2023年10月
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ゲノムデータへの公平なアクセスへ、新ソフト開発 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究者らが、世界の研究施設間によるゲノム情報の共有をより容易にするソフトウェア「sBeacon」を開発した。9月22日付発表。このソフトウェアに関する論文は学術誌Nature Biotechnologyに掲載された。

世界の病院や研究所間でセキュリティを確保しながらゲノムデータをやり取りするための技術「Beacon」システムでは、各施設が「ビーコン(標識)」を設置してデータを共有し、研究者や医師がこれらのビーコンを通じて情報を要求できる。2023年3月時点で、ビーコンを設置している組織は54カ所。

CSIROの変革的生物情報学(Transformational Bioinformatics)チームを率いるデニス・バウアー(Denis Bauer)博士の研究チームは、Beaconシステムに参加するうえでの障壁を取り除くため、Australian Genomics Health AllianceおよびGenomics Englandと共同で「サーバーレスBeacon(Serverless Beacon)」としてsBeaconを開発した。sBeaconはクラウドでの使用を前提に構築されており、データの管理はデータ所有者が保持するため、患者情報の安全性とセキュリティが保たれる。さらに、他のBeaconシステムの1,800倍高速で、コストは10分の1に抑えられる。

sBeaconはより小さなまたは経済的に恵まれない国や施設に対し、世界のネットワークへの公平なアクセスを提供する。バウアー博士は、「sBeaconはリアルタイムのデータ解析を提供し、がんや心血管疾患等の複雑な疾患の治療を改善できる可能性がある」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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