豪州のニューカッスル大学(University of Newcastle)は、同大学の研究者らが、豪州の資源を活用しながら製鋼工程の温室効果ガスの排出量を削減できる画期的な方法を開発していることを公表した。9月25日付。
脱炭素化が困難な(hard-to-abate)産業である鉄鋼業の排出削減は世界的な課題となっている。豪州は鉄鉱石の世界最大の輸出国であり、低排出の製鋼工程の開発では、豪州で生産される鉄鉱石に適した方法であることも重要となる。
同大学製鉄材料研究センター(Centre for Ironmaking Materials Research:CIMR)の共同所長であるトム・ハニヤンズ(Tom Honeyands)教授らは豪資源企業BHPとの共同研究プロジェクトで、再生可能エネルギーを用いて運転する電気製錬炉(ESF)を、高炉(blast furnace)の代替技術として利用できる可能性を示した。ESFはまた、電気アーク炉(Electric Arc Furnace)よりもグレードの低い鉄鉱石を処理できる柔軟性を持つ。
BHPはCIMRの研究成果をもとに、2023年3月 に、エンジニアリング企業Hatchと共同で、西オーストラリア州で採掘する鉄鉱石を用いて、ESFを実証するパイロットプラントの設計について発表した。
BHPはこの技術について、「推定では、ESFと直接還元鉄(DRI)の組み合わせにより、高炉を用いた従来の手法による業界平均と比較して、二酸化炭素(CO2)の排出原単位を80%以上削減できる」としている。
この技術は今後さらに幅広い投入原料に対応し、低排出技術の導入に向けた障壁を克服することにつながると期待されている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部