オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、人工知能(AI)に情報の管理を委ねることが人間の思考や認知にもたらす影響に関して、次のような見解を明らかにした。10月12日付。
AI の開発と応用のあらゆる側面が倫理的であることを確認することが重要
(出典:CSIRO)
ChatGPTのようなAIツールは情報を照合し、要約したうえで提示する能力を持ち、一部のツールは、ユーザーの好みに合わせた回答やコンテンツを生成するよう「パーソナライズ化」しつつある。こうしたAIに情報管理を「外注(outsourcing)」することは、私たちが「何を」考えるかだけでなく、「どのように」考えるかにも影響を与える可能性がある。
これまでインターネットや検索エンジンの普及が私たちの認知や記憶力、創造性に変化をもたらしたことが研究により示されている。例えば、オンライン検索の普及による記憶力の低下(「Google効果」)や、検索エンジンへの信頼度が高まるほどその結果に批判的な目を向けなくなる傾向が指摘されている。
人間は、機械が発した情報の整合性を過信する傾向(自動化バイアス)や親しみある情報を信頼しやすい傾向(単純接触効果)を持つ。親しみがもて、客観的に感じられる回答として情報を提示する今日のAIは、認知バイアスを引き起こす危険がより大きいと考えられる。
今こそ、インターネットやソーシャルメディアが人間の認知にもたらした影響を熟慮したうえで、予防策を講じるべきである。まずはAIリテラシーの確立や、人間の自律性や批判的思考を促進するAIツールの設計から始め、最終的には、人間とAI双方の強みと弱みを理解したうえで、私たち自身が望む未来を創造するための助けとしてAIを活用できるようにする必要がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部