2023年11月
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気候オーバーシュートが海洋生物の生息環境に影響 豪CSIRO«動画あり»

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の国際共同研究により、気温上昇が一時的にでもパリ協定の目標値を超えた場合、海洋生物の生息環境が数百年間にわたって減少することが明らかになった。10月10日付発表。研究成果は学術誌Communications Earth & Environmentに掲載された。

地球の気温上昇は1.5℃の閾値を超える可能性が高いとの見通しが一般的になりつつあり、一時的に2℃を超えるとも示唆されている。二酸化炭素(CO₂)排出量が気温上昇の抑制に必要な目標値を超えることは「気候オーバーシュート(climate overshoot)」として知られている。

この研究では、結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)の地球システムモデルによるオーバーシュートのシミュレーションを用いて、海水温の上昇とそれにより生じる貧酸素化(deoxygenation)が、海洋生態系の長期的な存続可能性にもたらす影響を探索した。

その結果、すべての実験とすべてのモデルで、海洋生物が生息可能な水域が大幅に減少することが示された。さらにこの変化は、オーバーシュートから元に戻っても、数百年間にわたり持続する。

漁業にとって重要なマグロや他の種には、十分に酸素を含んだ水が必要
© Shutterstock (出典:CSIRO)

オーバーシュートにより不可逆的な影響が生じる事態を避けるには、今世紀半ばまでに排出量ネットゼロを達成し、2℃を十分に下回る(well below)程度に気温上昇を抑える必要がある。

この研究はフランス・トゥールーズ大学(Université de Toulouse)のCentre National de Recherches Météorologiques(CNRM)が主導し、日本の国立研究開発法人海洋研究開発機構を含む複数の国の研究機関が参加した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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