2023年11月
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河川のぬめり「バイオフィルム」の栄養価がピークに達する時期判明 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究者らが、河川の生物の重要な栄養源である「バイオフィルム」(biofilm)の栄養価の経時的な変化を明らかにした。10月16日付。研究の成果はオープンアクセスジャーナルのEcosphereに掲載された。

低地の川から取り出された、73 日経過したバイオフィルムの様子
©Author provided, CC BY-ND

河川の石や沈み木の表面にみられるぬめり(slime)、すなわちバイオフィルムは、藻類、ラン藻、細菌、真菌、原生動物等の微生物群(communities of microorganisms)で構成され、淡水生態系の食物網の基礎として河川の健全性を支えている。この微生物群集の構成は物理的なかく乱や化学的変化の影響を受け、時間と共に変化する。しかし、バイオフィルムの栄養価が最大になるタイミングについてはこれまでほとんど明らかにされていなかった。

カゲロウの若虫は、川に沈んだ岩、木材、大型植物から藻類や微細な残骸をこすり落とす
©Chris Davey, CC BY-ND

CSIROのチームは、3つの河川の水面から20センチメートルの場所に木製のブロックを沈め、73日間にわたりバイオフィルムのサンプルを採取して微生物構成の変化を調べた。栄養価の評価にあたっては、脂肪酸のプロファイルとその空間における利用可能性(availability in space)の両方を考慮した独自のアプローチを用いた。

木製のブロック
(出典:いずれもCSIRO)

その結果、生物にとってのバイオフィルムの栄養価はブロックを沈めてから24~43日後にピークに達することがわかった。43日を過ぎると栄養価の低い糸状藻類やラン藻類が増加し、生物の成長と繁殖にとって重要なオメガ3脂肪酸を豊富に含む緑藻類や珪藻類が減少する。

この研究の成果は、生態系に配慮した河川の水位管理や環境水利用の計画に役立つと期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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