オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、脱炭素化に向けた解決策で藻類(algae)の可能性に期待が高まっているとして、以下のような事例を公開した。10月23日付。
藻類は海藻、微細藻類、プランクトン、植物プランクトンなどの水生光合成生物の総称であり、そのさまざまな種類ごとの用途や利点の研究は始まったばかりである。
ラボのフォトバイオリアクターから微細藻類を採取する
©Chris Crerar/CSIRO
藻類は土地や淡水、その他の資源の利用において食料などと競合せず収量が高いことから、バイオリファイナリーの原料として有望視されている。CSIROの「Towards Net Zero」ミッションで産業脱炭素化(Industrial Decarbonisation)を率いるウォーレン・フレンチェ(Warren Flentje)氏は、「藻類バイオファイナリーは、燃料や、石油、プラスチック、新たなタンパク質、健康・美容用基礎製品などの原料を生産できる」と期待する。
CSIROはカギケノリ(Asparagopsis)という海藻が持つ生物活性物質の働きを利用して、ウシ、ヒツジ、ヤギが排出するメタンを80%以上削減できる家畜用補助飼料「FutureFeed」を開発し、商用化を目指している。
海藻のエコシステムは、気候変動や生物多様性の喪失に対処し、海岸線を保護するための自然を基盤とした解決策として有望である。CSIROは大型海藻の一種であるケルプ(Kelp)が持つ、長期的な炭素除去作用に着目している。
健全な海藻や昆布の生態系を維持することは、海洋を保護する上での課題となっている
©Pexels/Kindel Media(出典:いずれもCSIRO)
微細藻類の有効利用に向けては、大規模生産を可能にする効率的な培養方法を開発する必要がある。大型藻類に関しては、生育環境の適切な管理が必要になる。CSIROは研究や投資を通じて、藻類利用における共通の課題である規模拡大に向けた取り組みを行っている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部