2023年12月
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ナノワイヤーネットワークによる動的な学習・記憶に成功 豪シドニー大学

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)と米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California at Los Angeles)の共同研究チームが、ナノワイヤーで構成された物理的なニューラルネットワークを用いて、脳の神経細胞のようにその場で(on the fly)動的に学習・記憶する能力を示すことに初めて成功した。11月1日付発表。研究成果は同日付けで学術誌Nature Communicationsに発表された。

ニューラルネットワークを管理するチップを持つ研究者

ナノワイヤーネットワークは、非常に細い金属線で構成され、自発的な配置(self-arranged)により脳の神経ネットワークのようなパターンを構成する。記憶・学習タスクには、ナノワイヤー同士の接点における電気抵抗の変化に反応するアルゴリズムを用いる。

電極は、チップの中心部にあるナノワイヤーのニューラルネットワークと相互作用する
(出典:いずれもシドニー大学)

研究を指導したズデンカ・クンチック(Zdenka Kuncic)教授は、「今回の研究はオンライン学習(online learning)の達成に向けた大きな一歩となる。標準的なアプローチでは、メモリに保存されたデータを用いて機械学習モデルを訓練するが、広範に利用するにはエネルギー消費量が大きすぎる。我々の新たなアプローチは、ナノワイヤーニューラルネットワークがサンプルを一つずつその場で学習・記憶することを可能にする」と語る。

今回の研究で、ナノワイヤーのニューラルネットワークは、絶え間なく流れ込むストリームデータを使用して画像認識タスクと記憶タスクを実行し、手書き数字のデータベースを用いた画像認識タスクで93.4%の正解率を達成した。

この成果は、センサーから生成されるデータの処理などの複雑な学習・記憶タスクに対応できる、効率的で省エネルギーな機械知能の開発につながると期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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