オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、同機構の調査船「Investigator」が、南極の氷床の融解に対する南極環流(Antarctic Circumpolar Current)の影響を調査するため、航海に出発すると発表した。11月13日付。
CSIROの調査船「Investigator」
CSIROと豪政府の助成を受けた研究プログラムAustralian Antarctic Program Partnershipが科学チームを率いる。航海の主任科学者(chief scientist)を務めるCSIROのブノワ・ルグレシ―(Benoit Legresy)博士は、氷床の融解が海面上昇に及ぼす影響を理解するうえで南極環流は重要な役割を果たすと語り、今回の調査の目的について次のように説明する。「南極環流は暖かい海水が南極に到達しないようにする安全帯の役割を果たしているが、この海流が生成する渦(eddies)と、より微細な規模のダイナミクスは、南極に暖かい海水が流れ込む最大の原因と考えられており、我々はこれらの現象を解明しようとしている」。
CSIROのブノワ・レグレシー博士
(出典:いずれもCSIRO)
この航海は、米航空宇宙局(NASA)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が共同開発した「表層水および海洋地形(Surface Water and Ocean Topography:SWOT)」探査衛星が収集したデータを検証する初めての試みとなる。SWOT衛星は非常に高い分解能で海面の標高を測定することが可能であり、Investigatorの観測データと組み合わせることで、気候変動の重要な要素である熱、炭素、エネルギーの再分配に関わる小規模な海洋特性が明らかになると期待される。
Investigatorはホバート(Hobart)を出港し、12月20日に帰港する予定。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部