オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)傘下のオーストラリアeヘルス研究センター(AEHRC)の科学者らが、人工知能(AI)によるX線に基づく心臓・肺疾患の診断精度を向上させる方法を明らかにした。11月20日付発表。研究成果は学術誌Artificial Intelligence in Medicineに掲載された。
AIを用いて胸部X線画像の読影(interpretation)とレポート作成を自動化する技術は、放射線科医をはじめとする医療従事者の負担を減らし、患者ケアを向上できる可能性がある。しかし、現在の技術は臨床で使用するのに十分な診断精度を達成していない。
AIには臨床医をより適切にサポートできる可能性がある
(出典:CSIRO)
AEHRCの研究チームは今回、ウォーム・スターティング(warm starting)という手法を用いてAIによる診断精度を改善することを試みた。チームはX線画像を読み取る「エンコーダ」とレポートを生成する「デコーダ」の最適な組み合わせを検討し、レポート自動生成タスクをwarm startingするためのさまざまなタスクの効果を調べた。この結果として、レポート自動生成の正確度において26.9%の相対改善(relative improvement)が達成された。
オーストラリアのモナシュ大学医学科(Monash Medicine)の放射線科医ダグ・アンダーソン(Doug Anderson)氏は「臨床家の燃え尽き(burnout)は精神疾患の危険因子の1つであり、特に診療文書作成の負担が大きい放射線科医の間でよくみられる。AIによる胸部X線の読影の支援はすばらしい解決策になりうる」と期待を語った。
チームは今後、より多くの病態を正確に同定できるようにこのAIモデルを改善し、臨床での使用を可能にすることを目指す。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部