オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)傘下のオーストラリアeヘルス研究センター(Australian e-Health Research Centre)が、人工知能(AI)を用いて、アルツハイマー病の遺伝に関わる新たな遺伝子変異と遺伝子間相互作用を同定した。研究成果は学術誌Scientific Reportsに掲載された。
アルツハイマー病は認知症の中で最も多い疾患だ
(© Chloe Rankin, 出典:CSIRO)
アルツハイマー病やその他の神経変性疾患の遺伝性(heritability)には、遺伝子変異だけでなく、変異間の相互作用(エピスタシス)が影響を及ぼすと考えられている。
同センターの科学者らは、CSIROが開発した、機械学習を用いた全ゲノム関連解析ツール「VariantSpark」と、エピスタシス検出ツール「BitEpi」を用いて、アルツハイマー病に関連する2つの新たな遺伝子変異と、変異の作用を調節する可能性がある95の新たな遺伝子間相互作用を同定した。
論文の責任著者であるCSIROの研究者ナタリー・トゥワイン(Natalie Twine)博士は、「BitEpiを用いた遺伝子間相互作用の同定により、アルツハイマー病の遺伝性における"ミッシング・リンク"のいくつかを説明できる」と語る。
筆頭著者であるCSIROの博士研究員ミッシャ・ルンドバーグ(Mischa Lundberg)博士は、これらの相互作用を含めることで従来の手法よりも多くの表現型分散(phenotypic variance)を見つけることができたと語り、「これは、アルツハイマー病研究において重要な疾患のドライバー(driver)を見つける能力が高まったことを意味する」と、その意義を強調した。
(2023年12月13日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部