オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は1月8日、CSIRO傘下のオーストラリアeヘルス研究センター(AEHRC)においてアルツハイマー病などの疾病の遺伝的基盤を調べるため、最先端ツールと人工知能(AI)を活用してゲノム研究を行っているナタリー・トワイン(Natalie Twine)博士の取り組みを公開した。
ナタリー・トワイン博士は2022 Brilliant Women in Digital Health Awardを受賞
© www.JasonKirkPhotography.com (出典:CSIRO)
アルツハイマー病などの疾病には複数の遺伝子が関わっており、それらの相互作用が発症や進行の一因となる。さらに、各人の固有の遺伝的構成も、発症の可能性から治療への反応まであらゆることに影響する可能性がある。数千人の完全なゲノムを照合して、関連するパターンを人間が手作業で探すことは不可能に近い。
この問題を解決するため、トワイン博士率いるチームは、クラウドコンピューティングと機械学習を利用した最先端のツールを構築し、AIを活用して大量のゲノムデータを精査することで、関連するパターンを調べている。こうしたパターンには、特定の疾患を持つ人々に共通する遺伝的差異や変異などが含まれる。また、ある遺伝子が他の遺伝子の有無によってどのように影響されるかも関係する。
トワイン博士によれば、数十万に上る遺伝子間の相互作用の分析を迅速化するには、複雑なコンピューティングアプローチが必要であり、スーパーコンピューティングの力がなければ困難だという。
トワイン博士は、こうした「バイオインフォマティクス」と呼ばれるアプローチが新しい発見の道を開きつつあるとし、今回の取り組みが疾病の早期発見、標的を絞った治療、各人の遺伝子の設計図に合わせた未来の医療につながるとの期待を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部