オーストラリアのメルボルン大学(University of Melbourne)の研究チームが、国立保健医療研究評議会(NHMRC)から助成を受け、神経変性眼疾患を患う人々の視力を回復させるため、超音波を用いた新たな「音響遺伝学(sonogenetic)」技術を評価することになった。1月2日付発表。
同大学物理学部(School of Physics)のウェイ・トン(Wei Tong)博士はNHMRCの「Ideas Grant」プログラムから70万豪ドルの助成金を獲得し、医用生体工学科(Department of Biomedical Engineering)や生体工学研究所(Bionics Institute)の研究者らと共に3年間の研究プロジェクトを実施する。
トン博士らが提唱する音響遺伝学的手法は、遺伝子改変技術を用いて網膜神経に超音波に対する感受性を持たせ、特許技術により超音波トランスデューサーをリング状に配置したコンタクトレンズを用いて、超音波刺激による治療を行う。
黄斑変性症や網膜色素変性症といった神経変性眼疾患は視力喪失の主要な原因となっている。遺伝子改変技術と光を用いた光遺伝学(optogenetic)治療も開発されているが、使用する光による細胞への光毒性や、正常に機能している光受容体まで使えなくなることが課題となっていた。音響遺伝学はこのような問題を回避しながら患者の視力を回復できる可能性がある。
今回のプロジェクトで同博士らは、コンピューターシミュレーションと動物試験を用いてこの技術の安全性と効果を検証する。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部