オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は1月3日、オーストラリアに生息する動物が猛暑や干ばつに適応するために進化させたユニークな戦略について公開した。7種類の動物を取り上げ、周囲の環境から水分を抽出したり、体内の水分管理で体を冷やしたりするなどの適応戦略が明らかになった。
有袋類のムルガラは水を飲む必要がない。この肉食動物は、水分の多い獲物を捕食するだけで必要な水分を補給できる。また、尻尾の中に余分な脂肪を蓄えておき、食料が不足する季節にその脂肪を利用する。
ムルガラ
© Bobby Tamayo
キンカチョウは干ばつ期になると、体の中の脂肪を分解して水分を取る。筋肉などのタンパク質を分解するのではなく脂肪を分解することで、飛行や心臓の機能に必要なタンパク質を温存する。また、高温を予測することができ、熱波に備えて先手を打って餌を食べたり水を飲んだりすることができる。
キンカチョウ
© Hélène Aubault via Bush Heritage
モロクトケゲは体を覆う吸湿性のうろこで集めた夜露で水分を集め、毛細管作用によって口に水分を移動させる。極端に乾燥すると、砂の中に体を埋めて、砂から水分を吸収する。
モロクトカゲ
© Christopher Watson
十字架ガエルは粘液を分泌して体を覆い、雨が降るまで何年も地下で待つ。
十字架ガエル
© Dr Paul Anthony Stewart, Sydney University; Flickr username Paulhypnos
砂漠に生息する有袋類のミミナガバンディクートは大きな耳をラジエーターとして利用する。耳の表面積は非常に大きく、血管が張りめぐらされているため、耳を通った血液は以前よりも冷えて体内に戻り、全身の体温を下げる働きをする。
ミミナガバンディクート
© Bernard Dupont via Flickr
ハリモグラは鼻から泡を吹く。泡は鼻先で割れて鼻を濡らし、その水分が蒸発する際に冷却効果を発揮する。また、トゲは柔軟な断熱材の役割を果たして熱を保つため、トゲのない腹と脚を冷たい表面に押し付けて体を冷やす。
ハリモグラ
© Taronga Zoo
カンガルーは飲み水を得るために深さ1メートル以上の穴を掘ることが知られている。跳躍は、草木がまばらな地域で餌や水を見つけるために長距離を移動するのに役立つ。食料の不足時には妊娠を一時中断して胚を休眠状態に保つことができる。さらに、汗腺がない代わりに、血管網が発達した前足を舐めて濡らし、水分の蒸発で冷却を促す。
カンガルー
© Tambako the Jaguar via Flickr
(出典:いずれもCSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部