2024年02月
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AIでアルツハイマー病の「失われた遺伝率」解明へ 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は1月17日、同機構の科学者らが、人工知能(AI)と機械学習を用いて、アルツハイマー病の早期発見・早期介入につながる遺伝率(heritability)の解明に取り組んでいることを公表した。

DNA の二重らせん構造
(出典:CSIRO)

遺伝率とは、ある集団の中で、ある形質の多様性(variation)が遺伝子の多様性によって生じる程度を指す。アルツハイマー病の研究における大きな課題の1つに、疾患が遺伝することはわかっているが遺伝要因を特定できない「失われた遺伝率(missing heritability)」という問題がある。

アルツハイマー病の発症や表現型には、遺伝子の多様性だけでなく、異なる遺伝子間の関係、すなわち「遺伝子相互作用(gene interactions)」が関わっていることがわかっている。従来の遺伝子研究のアプローチでは、約2万個の遺伝子の間の遺伝子相互作用を全て解明することは不可能であった。

CSIROは、AIと機械学習を用いて大規模なゲノムデータセットを解析する「VariantSpark」等のツールを開発し、この課題の解決に取り組んでいる。こうしたアプローチにより、遺伝子間の関係が疾患の理解にどの程度役立つかを見通せるようになってきたという。

失われた遺伝率の解明により、疾患の原因と注意すべき徴候がより正確に理解でき、リスクのある人の早期発見や効果的な早期介入戦略の開発が可能になると期待されている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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