2024年02月
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空調設備のフィルター、森林火災噴煙に含まれる有害物質を捕捉 豪シドニー工科大学

オーストラリアのシドニー工科大学(UTS)の研究者が、森林火災の噴煙による人体への害を、建物の空調設備により軽減しうることを明らかにした。1月23日付発表。この研究成果は学術誌Environmental Pollutionに掲載された。

豪州では2019年~2020年に大規模な森林火災「Black Summer」が発生し、その噴煙により、シドニーやその周辺地域に深刻な大気汚染が生じた。研究を率いた同大学の環境学博士候補生ライサ・ギル(Raissa Gill)氏は「我々が呼吸により吸い込んでいる森林火災の噴煙に何が含まれているのかをより詳しく知りたいと考えた。市販の空調フィルターを用いて、フィルターがなければ人が吸い込んでいたであろう粒子を捕捉し、化学成分を分析することができた」と語る。

研究チームはBlack Summerのピーク時およびその1年後に、UTS構内の建物に設置された暖房・換気・空調(HVAC)システムのフィルターから粒子状物質を採取した。

その結果、森林火災時の粒子状物質の1日の濃度は、通常の2~3倍に上っていた。さらに、これらの粒子は通常よりも細かく、可溶性の水銀、硫酸塩、硝酸塩などのさまざまな有毒化学物質を含んでいることがわかった。

HVACシステムは森林火災噴煙対策を意図して設計されたものではないが、Black Summer発生中のキャンベラの大気質に関する別の研究では、空調設備を設置した屋内では、粒子状物質の濃度が屋外の10分の1まで低くなることが示されている。

ギル氏は、「気候変動により深刻な森林火災の増加が予想されていることを踏まえると、人々の健康を維持するうえで、森林火災に対応した設備がこれまで以上に切実に必要とされている」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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