豪ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は3月13日、同大学の研究者が設計した電力線の不具合を早期に検出する技術「early fault detection(EFD)」が、北米、欧州、豪州において森林火災と大規模停電(ブラックアウト)の防止に役立っていることを伝えた。
この技術を商用化した豪メルボルンの企業アイ・エヌ・ディー・テクノロジー(IND Technology)は、豪州全土の約20万キロメートルに及ぶ1線大地帰路(single-wire earth return:SWER)ネットワークにEFDを設置することを計画し、豪政府の助成を求めている。
EFDは既に世界に2,500基設置され、合計1万2,500キロメートル超の電線を監視している。防止した不具合の件数は750件を超え、米国とカナダでは森林火災のリスク軽減計画に取り入れられている。
この技術の開発を率いた研究者でアイ・エヌ・ディー・テクノロジーのCEOでもあるRMITのアラン・ウォン(Alan Wong)教授によると、EFDは特許取得済みのセンシング手法とデータ処理アルゴリズムにより、電線で予想される故障の位置を10メートルの範囲まで正確に特定し、電力網の設備をより事前対応的かつコスト効果の高い方法で管理することを可能にするという。
ビクトリア州メアリーズビル(Marysville)で2009年2月に発生し壊滅的な被害をもたらした森林火災は、1本の電線の切断が原因であるといわれている。EFDシステムはビクトリア州での試験運用中に同様の電線の不具合を検出しており、ウォン教授は、「この技術は火災を防ぎ、命を守れると伝えてきた。この例はまさにその本質を捉えたものである」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部