オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)と英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)、豪州のモナシュ大学(Monash University)、シドニー大学(University of Sydney)、ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)の共同研究チームが、完全にロール・ツー・ロール(roll-to-roll)方式で印刷したペロブスカイト太陽電池で発電効率の新記録を達成した。3月13日付発表。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。
CSIRO再生可能エネルギーシステムグループを率いるアンソニー・チェスマン(Anthony Chesman)博士
(出典:CSIRO)
次世代の太陽電池材料として期待されるペロブスカイトを用い、薄いプラスチックフィルムに印刷されたこの太陽電池は、薄型・フレキシブルで、容易に持ち運びできる。小面積で15.5%、50平方センチメートルのモジュールで11%の発電効率を達成し、この方式で印刷された太陽電池の発電効率記録を更新した。
CSIROの再生可能エネルギーシステムグループ(Renewable Energy Systems Group)を率いるアンソニー・チェスマン(Anthony Chesman)博士は「ロール・ツー・ロール方式により長く連続したプラスチックのロール上に太陽電池を製造することが可能になり、生産率を劇的に向上できる」と、規模拡大につながるこの方法の利点を述べた。
この太陽電池は、都市建設や採掘作業、緊急事態管理、災害救助、宇宙、防衛、個人向け電子機器などの幅広い分野で、従来の硬く重いシリコン太陽電池では不可能であった用途に活用できる可能性がある。宇宙での活用に関しては、CSIROの印刷された太陽電池を搭載した衛星が既に性能検証のため軌道に投入されている。
CSIROはこの技術のさらなる開発と商用化に向け、産業パートナーを探している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部