オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は8月12日、重要鉱物と鉄鋼製造の脱炭素化に関して豪州とインドが取り組んでいるパートナーシッププログラムを紹介した。
2022年に豪外務貿易省が発表した「2035年までのインド経済戦略改訂版(updated India Economic Strategy to 2035)」の下で、CSIROは、2023年1月より、豪州政府が出資する以下の2つの研究開発(R&D)パートナーシップを実施している。これらの取り組みは、豪州とインドが互いに能力や資源を補い合うものであり、持続可能な開発に向けた共通のコミットメントに基づいている。
- 「インド・豪州重要鉱物研究パートナーシップ(India Australia Critical Minerals Research Partnership)」:重要鉱物・重要材料の持続可能で強靭なサプライチェーンに焦点を当てた1220万豪ドルのパートナーシップであり、主に以下の共同研究プロジェクトが進行している。
- インドにおけるカーボナタイト中のレアアース分布の調査
- チタンとバナジウムを同時に抽出する独自技術の開発
- レアアース金属の新たな製造工程の開発
- バッテリーの正極活物質(CAM)の製造能力・製造技術の開発
- 「インド・豪州グリーンスチール研究パートナーシップ(India Australia Green Steel Research Partnership)」:鉄鋼製造時の温室効果ガス排出の削減に焦点を当てた1040万豪ドルのパートナーシップであり、以下のような分野に関する共同研究プロジェクトが進行している。産業パートナーとしてインドの鉄鋼大手タタ・スチール(Tata Steel)が参加している。
- 脈石(gangue)を除去して鉱石の品質を高め、製造時のエネルギー効率を高める方法
- 低品位炭の一部をインド産の竹で作られたバイオ炭に置き換える方法
- 高炉の排ガスを捕捉して一部を再利用する二酸化炭素回収技術
- 電気炉を用いた直接還元(direct reduction)法で使用するための鉱石の処理
- 二酸化炭素排出をほぼゼロにできる水素プラズマ製錬法
さらに上記2つのパートナーシップの下で出資されている「India-Australia Minerals Scholar Network」では、インドと豪州の学生と研究者に、互いの国の研究施設への訪問や研究、連携を支援する奨学金や学位プログラム、シンポジウムなどの機会を提供している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部