2025年01月
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ナノ技術によるアルツハイマー病ワクチン開発に助成金獲得 豪シドニー工科大学

オーストラリアのシドニー工科大学(UTS)は1月7日、同大学とマッコーリー大学(Macquarie University)、アデレード大学(University of Adelaide)の学際的共同研究チームが、ナノ技術を用いた画期的なアルツハイマー病ワクチンの開発に対し、国立保健医療研究評議会(NHMRC)の「Ideas Grant」プログラムの下で140万豪ドルの研究助成金を獲得したと発表した。

チームは今後4年をかけて、現在研究モデル段階にあるこのワクチンを、アルツハイマー病の進行を遅延または停止する効果を実証する前臨床試験段階へと進めることを目指す。

UTSのバイオロジクスイノベーション施設(Biologics Innovation Facility)の所長で研究チームを率いるアンドリュー・ケア(Andrew Care)博士によると、同チームのワクチン基盤技術では、ナノケージと呼ばれる非常に小さな構造にアルツハイマー病発症の原因となるタンパク質を挿入する。このナノケージを人間の体内に注入すると、免疫系が脳でこれらのタンパク質を分解する抗体を産生する。これらのタンパク質を分解して脳から除去することで、アルツハイマー病を直ちに止めることができると博士らは期待している。同博士は「このプラグアンドプレイ(plug-and-play)ナノケージを用いれば、アルツハイマー病を引き起こすタンパク質のさまざまな形態や組合せを標的としたワクチンを迅速に開発し、検証できる」と語る。

アルツハイマー病は進行性の疾患であるため、早期の介入は非常に重要である。ケア博士は「長期的には、特にリスクの高い人々に対して、人生の早い段階で安全かつ簡単に投与できるワクチンを開発することを目標としている」と述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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