ウーロンゴン大学(University of Wollongong)は1月15日、同大学の博士候補生ブルック・コンロイ(Brooke Conroy)氏らの研究により、沿岸湿地においては、マングローブ等の植物の根の成長により土壌が形成され、根系に炭素が貯留され、気候変動から生態系を守る独自の役割を果たしていることが明らかになったと伝えた。この研究の成果は学術誌Plant and Soilに発表された。
コンロイ氏らは、マングローブの分布の世界最南端に近いビクトリア州ウエスタンポート湾(Westernport Bay)の沿岸湿地にあるマングローブ林、塩性湿地(saltmarsh)、隣接する潮間帯林(tidal forest)で、2年間にわたる植物の根の成長を測定した。これらの林や湿地は、炭素を取り込み貯留する働きをもつことから「ブルーカーボン」生態系として知られている。
研究の結果、沿岸湿地は、植物の根の成長と外部からの堆積物を用いて、土壌の高さ(soil elevation)を形成し、海水面の上昇に合わせて調整できることが明らかになった。この機能は、気候変動に対応し海岸線を浸食から守るうえで重要な役割を果たすと考えられる。
コンロイ氏は、「豪州の人口の85%以上が沿岸地域に住んでおり、人々の生活や生態系を維持するには沿岸湿地の環境を守り、向上させることが非常に重要である」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部