2025年02月
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気候変動がトカゲの「生活費」を圧迫 豪メルボルン大学

豪メルボルン大学(University of Melbourne)の研究者が率いた研究により、砂漠に生息するトカゲの「生活費」すなわちエネルギー収支が、地球温暖化により圧迫されることが明らかになった。この研究成果は1月17日に学術誌Scienceに発表された。

外温動物であるトカゲでは、人間の「生活費」にあたる生きるために必要なエネルギーと、それを賄う能力は温度に依存する。砂漠はトカゲの餌が乏しく、採食活動ができないほど高温になる時間が多くあるため、砂漠のトカゲは特に過酷な環境に置かれている。

研究チームは、物理学と生物学を組み合わせたモデルで「生活費」を予測し、このモデルと過去のフィールドデータを用いて、豪州とアフリカの砂漠地帯に生息するトカゲへの温暖化の影響を定量化した。

筆頭著者である同大学のクリストファー・ワイルド(Kristoffer Wild)博士は、「砂漠の温度が上昇すると、昼行性のトカゲは、より多くの餌が必要なのにそれを探せる時間が少ないという逼迫状況に陥ることがわかりました。一方で、夜行性のトカゲは、夜暖かくなることで捕食できる時間が増えて利益を得られます。つまり、昼行性のトカゲは労働時間が減るのにより高い生活費を支払わなければならず、夜行性のトカゲは、残業時間を増やすことで高い生活費を相殺できるといった状況になるのです」と解説する。

また、同博士は、温暖化から受ける影響は活動の時間帯によって異なるため、個体群を守るには種に応じた保全戦略をとることが重要であると述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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